埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2016年度 >2016年10月12日発表
解雇(弁護士 三輪 貴幸)
第1 解雇とは
1 意義
①使用者の⇔従業員からの=解雇
②一方的意思表示によって⇔双方の合致=合意解約
③労働契約の効力を
④将来に向かって終了せしめる行為
2 解雇の種類
①懲戒解雇
経営秩序に反する制裁としての解雇→懲戒処分の一種
∴就業規則の定めが必要
∴解雇予告手当等が不要に
②普通解雇
ⅰ個別解雇
「個々の労働者」に属する事由に基づく解雇⇔懲戒事由に該当しない場合でも
ⅱ整理解雇
「企業の」経営上の事由に基づく解雇
→判例の蓄積による概念
もっぱら使用者側の事情なので、従業員の不利益は大きい
→個別解雇よりも認められにくくなる(べき、はず)
第2 解雇の制限の考え方
解雇は、「労働契約」の使用者からの一方的意思表示による終了
→契約自由の原則・・・使用者には解雇の自由があるのか?
↓
対等な私人間ならそれでもよいだろうが、使用者と従業者には大きな力の差がある
↓
その不均衡を是正する必要がある=労働法の基本的な発想
↓そこで
1 法律上様々な制限がある(参考資料1)=解雇の法的規制及び手続的規制
①労働基準法
②労働組合法
③特別法など
また、
2 解雇法理(参考資料1)=合理的理由が必要
→労働契約法16条にもその趣旨が明記
信義則、権利濫用という民法1条の適用場面
→規範的な要件事実(後述)なので莫大な判例の蓄積がある
∴割愛
第3 解雇をめぐる要件事実は?(地位確認請求をモデルに)
1 請求原因
①雇用契約の成立
②「使用者側による」雇用契約終了の主張=確認の利益の主張
↓
2 抗弁→抗弁のレベルで初めて具体的主張を要するようになるのは確認請求の特徴
①懲戒解雇の場合
ⅰ)就業規則の懲戒事由の定め
ⅱ)懲戒事由に該当する事実の存在
ⅲ)ⅰ及びⅱに基づく解雇(or解雇予告)をした事実
ⅳ)ⅲ後30日の経過or解雇予告除外事由の存在
②普通解雇の場合
ⅰ)解雇(or解雇予告)をした事実
ⅱ)ⅰ後30日の経過
※懲戒解雇との違いは、就業規則についての違い
↓
3 再抗弁
解雇権濫用の評価根拠事実
↓
4 再再抗弁
解雇権濫用の評価障害事実
第4 では、整理解雇の4要件とは?
1 東洋酸素仮処分事件:東京高判S54.10.29(参考資料2)を代表とする
①整理解雇の必要性(経営の危機)
②解雇回避努力を尽くしたこと
③人選の妥当性
④説明・協議を尽くしたこと
2 要件なのか要素なのか?
基本的に上記4要件は評価根拠事実及び評価障害事実の類型化でしかない
→要素とみるべき(私見を交えて)
単に評価根拠事実と評価障害事実をこの4つに分けて主張してくれませんかね、
という裁判所の都合ではないだろうか?
→間接事実のぶつけ合いでしかないのでは?
3 主張・立証のポイントは?
評価根拠事実と評価障害事実のぶつけ合いというのは、すなわち両事実の比較衡量なので、立証責任を論ずる意味はない
↓
判例の動向・方向性も時代によって流動的なので分析しにくい
各要件について判例があまりにも膨大にある
↓
例えば
要件①については
ⅰ)景気動向
ⅱ)企業の将来予測
要件②については
ⅰ)諸経費の削減、節約→解雇による人員削減は最後の手段という視点から
ⅱ)解雇以外の手段
ⅲ)希望退職者の募集
要件③については
ⅰ)勤務成績、勤務評定、人事考課
ⅱ)法令違反の潜脱→シビアに争われるであろう部分
要件④については
ⅰ)交渉頻度、回数、時間
ⅱ)双方の協議態様
などがざっくりと主張立証のファクターとなりうる。
以上