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活動報告Activity Report

埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2017年度 >2017年2月9日発表

商標権②(類否判断) (弁護士 三輪 貴幸)

第1 基本的概念 
 ある商標と別の商標が類似しているかどうかの判断を、商標の類否判断という。
類否判断は、二つの場面で問題となる。
①商標出願の際に、他人の既に登録している商標と類似していないか?
=登録拒絶事由(法第4条1項11号)に当たらないか?
②他人の使用している標章が、自己の登録商標に類似していないか?
=商標権侵害(法第37条)に当たらないか?

第2 類否判断の基本
類否判断は、
①商標の外観(見た目) 
例:AdidasとAjidas
②称呼(呼び方、発音。「呼称」ではないので注意)
 例:アディダスとアジダス
③観念(イメージ)
 例:Rainと雨・・・外観も呼称も異なるが、想起されるものは同じ
の三要素がどのくらい近似しているのかを判断する。
この判断は、二つの商標に同時に接した場合に需要者が混同するか、という観点ではなく、別々の時間・場所で各商標に接した場合に混同するか、という観点で行われる。
∵需要者は二つの商標に同時に接するケースは稀であるし、二つの商標に同時に接した場合で判断してしまうと、類似よりも「違い」を判断してしまうから
→ただし、現実の訴訟などでは、もちろん二つ同時に見比べることになる
 裁判官がこの点をどう処理しているのかは不明

第3 出所混同のおそれ
 1 登録の場面における類否判断
類否判断は、三要素だけで判断されるのではない。
∵商標の識別機能を害しているかどうか、が判断のポイントであるため。
→取引の実情が考慮され、需要者が混同するか、を判断
指定商品は、当該分野の中で、(三要素のうち)何が商品の識別において重視されているのか?
=三要素のうちどの要素を重視するかは、指定商品の業界における具体的な事情によって左右される
「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」最高裁S43.2.27判決
→「硝子繊維糸の前叙のような特殊な取引の実情のもとにおいては、外観および観念が著しく相違するうえ称呼においても右の程度に区別できる両商標をとりちがえて商品の出所の誤認混同を生ずるおそれは考えられず」と判断
←飲食店の役務商標などでは、称呼が重視されたりもする
 2 侵害の場面における類否判断
侵害場面における類否判断においては、登録場面と異なり、両商標が「実際に使用されている」ことが前提
→その商標が、どのように使用されているのか、当事者の主張・立証により特定
 要素の例:どのような商品(役務)に
      どのような形で
      当該商品(役務)がどのような需要者層を対象に
      どのような販売ルートで提供されているか
→その上で相手方の商品の需要者が混同するおそれがあるかどうかが判断される
例:指定商品が「衣服」であっても、実際の商標使用に場面おいては、「スーパーの衣料品売り場で販売されている子供服」と具体的に特定される
∴そのような子供服の需要者が混同するおそれがあるかが判断される
以上



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(Saitama Corporate Legal Affairs Association)