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活動報告Activity Report

埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2017年度 >2017年5月12日発表

著作権②(著作権の制限) (弁護士 三輪 貴幸)

第1 著作権の制限の基本構造
著作物は著作者の許諾を得て利用するのが原則
←公益上の理由や他者の権利との調整の観点から一定の場合に著作権が制限され、許諾を得ずとも利用できる例外を認めている。

1 私的領域での教養、娯楽、文化活動を認めるための制限
・私的利用のための複製(著作権法第30条)

2 人々の教育、学習活動に資するための制限
・教育機関における複製(著作権法第35条)
・試験問題としての複製(著作権法第36条)
・営利を目的としない上演等(著作権法第38条)
・図書館等における複製(著作権法第31条)
・点字による複製等(著作権法第37条)
・教科用拡大図書の作成(著作権法第33条の2)
・聴覚障碍者のための自動公衆送信(著作権法第37条の2)
・教科用図書等への掲載(著作権法第33条)
・学校教育番組の放送等(著作権法第34条)

3 人々の表現活動に資するための制限
・著作物の引用(著作権法第32条)
・時事問題に関する論説のための転載等(著作権法第39条)
・政治上の演説等の利用(著作権法第40条)
・情報開示のための利用(著作権法第42条の2)

4 公益性の高い業務の円滑な遂行に資するための制限
・裁判手続等による複製(著作権法第42条)
・時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)
・放送事業者等による一時的固定(著作権法第44条)
   
第2 諸問題各論(相談が多そうな部分)
 1 私的利用
  要件=基本的に私的複製の量を抑制するための要件
①家庭内などの限られた範囲で、仕事以外の目的に使用すること
→企業内その他の団体において業務のための内部複製は×
 個別具体的な判断が必要
②使用する本人がコピーをすること
→自炊代行や録画転送サービスは×
 ∵この場合のコピー者は業者
③使用する本人のみが使える状態の機器でコピーすること
→私的複製の過程に外部が入り込まないように
④コピー防止を解除してコピーするのではないこと
→著作者が私的複製を認めない場合にはその意思が優先

2 引用
趣旨=既存の著作物をそのまま利用して新たな著作物が創作されることは、社会的に広く行われていることであり、それが文化の発展に寄与していることから、著作権法上著作物を一定の場合に引用して利用することが認められている
要件=著作権者との権利との調整を図るための要件
①すでに公表されている著作物であること(条文)
②公正な慣行に合致すること(条文)
③引用の目的上正当な範囲内であること(条文)
→引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない(東京知財高裁H22.10.13)
④引用部分とそれ以外との主従関係が明確であること(裁判例)
→主従関係は、両著作物の関係を、引用の目的、両著作物のそれぞれの性質、内容及び分量並びに被引用著作物の採録の方法、態様などの諸点に亘つて確定した事実関係に基づき、かつ、当該著作物が想定する読者の一般的観念に照らし、引用著作物が全体の中で主体性を保持し、被引用著作物が引用著作物の内容を補足説明し、あるいはその例証、参考資料を提供するなど引用著作物に対し付従的な性質を有しているにすぎないと認められるかどうかを判断して決すべき(東京高裁S60.10.17)
⑤引用部分が明確であること(裁判例)
⑥引用を行う必然があること(裁判例)
⑦出所が明示されていること(著作権法第48条)

以上



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(Saitama Corporate Legal Affairs Association)