埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2017年度 >2017年7月28日発表
著作権④(著作権侵害)(弁護士 三輪 貴幸)
第1 請求の趣旨
1 記載例
1 被告は、別紙●●目録記載の●●を、出版、販売、領布してはならない
2 被告は、前項の●●及びその印刷用原版を廃棄せよ
3 被告は、別紙目録2の謝罪広告を、別紙目録1記載の新聞の各全国版-2-の広告欄に、標題部の写植を13級活字、その余の部分を写植11級の活字でもって、各1回掲載せよ
4 被告は原告に対し、金●●●万円及びこれに対する●●●から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」
2 ポイント
・1及び2は差止請求・・・知的財産権ではおなじみ
著作物の態様、著作権侵害の態様によって様々な方式がある
・3は信用回復措置
=著作権法115条→特許法106条
・方法は新聞広告に限られない。ホームページに掲載せよ等自由
・著作者人格権が侵害されたときの場合
・4は損害賠償請求
→損害賠償の根拠は民法709条(著作権法に規定はない)
∴遅延損害金利率は「年5分」
故意・過失が要件となる=特許権等と異なり過失の推定規定がない
第2 訴訟物価額
1 差止請求部分
①or②or③
①訴訟提起時の原告の年間売り上げ減少額
×訴訟提起時の原告の利益率
→商標権と異なり1/10にされない
②訴訟提起時の被告の年間売り上げ推定額
×訴訟提起時の被告の推定利益率
→商標権と異なり1/10にされない
③年間使用料相当額
→商標権と異なり10年分×0.8ではない
※使用料が契約等で決まっているのであれば圧倒的に③が簡単か?年間使用料は疎明資料必要
2 信用回復措置部分
措置に要する費用(広告費等)が認定できる場合はその額
できない場合や算定が極めて困難な場合は160万円
第3 審理モデル
大阪地裁の場合でも、著作権版はなし
→しかし、侵害論と損害論が分けて審理が進むのは、他の知的財産権と同じか?
第4 要件事実
1 著作物につき著作権を有していること
→商標権等と異なり登録制度がないので、主張立証の対象になる
→著作権が自己に属することの確認を求める訴訟、という類型もある
2 著作権を侵害する行為があること
著作物を利用(=侵害行為)しているとされるには、現に利用されている著作物(利用著作物)が、対象となる既存の著作物(既存著作物)に依拠して作出されたものであって(依拠性)、利用著作物と既存著作物における表現が類似していること(類似性)が必要
(1)依拠性
「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」の最高裁判所判決(昭和53年9月7日)は、「既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従つて、その存在、内容を知らなかつた者は、これを知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない」と判示
→具体的には、原告への著作物へのアクセス可能性
原告の著作物の著名性、周知性
被告の利用著作物との表現の類似性
→依拠性がないことを積極否認として被告が主張立証することもある(114条の2)
(2)類似性
「パロディ事件」(第一次)の最高裁判所判決(昭和55年3月28日)は、「自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾無くして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られる」と判示
→「本質的な特徴」
「直接的に感得」がキーワード
以上