埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2017年度 >2017年10月25日発表
特許権②(侵害訴訟)(弁護士 三輪 貴幸)
第1 請求可能な内容
1 差止請求…故意、過失は不要
→行為の停止の請求
侵害の予防の請求
侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除去等
2 損害賠償請求…過失の推定あり(法103条)
→損害額の推定規定あり
3 信用回復措置請求
4 刑事責任の追及あり
第2 訴訟物価額
1 差止請求部分
①or②or③
①訴訟提起時の原告の年間売り上げ減少額
×訴訟提起時の原告の利益率
×権利の残存年数×1/8
②訴訟提起時の被告の年間売り上げ推定額
×訴訟提起時の被告の推定利益率
×権利の残存年数×1/8
③(年間使用料相当額×権利の残存年数)-中間利息
※使用料が契約等で決まっているのであれば圧倒的に③が簡単か?年間使用料は疎明資料必要
2 信用回復措置部分
措置に要する費用(広告費等)が認定できる場合はその額
できない場合や算定が極めて困難な場合は160万円
3 損害賠償部分
推定規定あり(法102条)
①102条1項・・・侵害品の販売の場合
=侵害品の販売量×被侵害者の単位数量当たりの利益-権利者の実施能力を超えた部分に相当する金額
②102条2項・・・侵害による利益取得
=侵害者が侵害によって得た利益
③102条3項・・・使用料相当額
→許諾例がある場合はその例により、許諾例がない場合、一般的な使用料を斟酌しつつ、特許の使用の程度・方法等を勘案し、使用料相当額を決定
第3 審理モデル
大阪地裁の場合ですが、別添参照ください。
1 属否論
特許発明は具体的な物体ではない
→ある物品や方法が、特許発明の範囲に属していれば、これを無断で使用することが特許権侵害行為となる
→特許発明の範囲は、特許請求の範囲(請求項、クレーム)に記載された構成要件の文言によって定まる
=ある物品(対象製品)が特許の構成要件を満たしているかの判断が属否論
・属否はクレームの文言解釈によって判断されるのが原則
・特許権侵害が成立するためには、構成要件の全てを満たすことが必要
※例外:均等論
クレームに記載された構成中に対象製品などと異なる部分があるとしても、
①その異なる部分が特許発明の本質的な部分ではなく、
②その異なる部分を対象製品などにおけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができる
③製品の製造時点において、当業者が置き換えを容易に思い至ることができた
④その製品が公知技術と同一ではなく、また当業者が公知技術から容易に遂行できたものではない
⑤その製品が発明の特許出願手続きにおいて特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もないこと
との要件を満たせば、特許権侵害と判断される
2 無効論
=特許権侵害訴訟における抗弁
当該特許が無効であることを、無効審判以外に訴訟手続上で争える
→新規性、進歩性などの無効事由(法123条1項各号)を主張・立証する
以上