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実用新案権・意匠権(弁護士 三輪 貴幸)
第1 実用新案権
1 基礎概念
実用新案権:業として実用新案を実施する権利(16条)
実用新案:物品の形状、構造、組合せにかかる考案
→特許発明と異なり、権利が付与される対象が限定される
考案:自然法則を利用した技術思想の創作(2条1項)
→特許発明と異なり、高度な創作に限られない
2 取得手続
・形式的審査のみで登録がなされる
→特許発明と異なり、実体的審査がない
・出願の日から3年以内に特許出願に変更することができる(特許法46条)
・実用新案登録後、原則実用新案登録に基づく特許出願が可能(特許法46条の2)
・存続期間は出願日から10年間(15条)
3 実用新案権の特徴
実用新案権は実体審査がない
→実質的に保護のレベルに達していない考案が登録され、権利が濫用されるおそれ
そこで、実用新案権行使の要件として
①実用新案技術評価書(特許庁長官に請求して取得(12条))を提示し
②警告をした後
でなければ、侵害者に対する実用新案権の行使はできない(29条の2)
実用新案権者が侵害者に対して実用新案権を行使
→その後実用新案登録の無効審決が確定した場合
権利行使した実用新案権者は損害賠償責任を負う(29条の3)
第2 意匠権
1 基礎概念
意匠:物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合であって
視覚を通じて美感を起こさせるもの(2条1項)
→技術的な思想の創作ではない
意匠権:物品の外観について創作した工業上利用可能な新しい意匠に対する独占権
→物品は有体物のうち、市場で流通される動産をいう
=不動産、液体、気体は含まれない
2 取得手続
・登録のための要件(3条)
①工業上利用性:工業的技術を用いて、同一物を反復して多量に生産しうること
→自然物、不動産、美術工芸品は対象にならない
②新規性:公然と知られた意匠ではないこと
→自ら公開してしまっても、公然と知られたに該当してしまう
③創作非容易性:意匠の属する分野における通常の知識を有する者が
公然と知られた形状、模様、色彩またはこれらの結合に基づいて
容易に創作できないこと
・意匠登録を受けることのできない意匠(5条)
①公序良俗に反するおそれのある意匠
例:国旗を表す意匠、王室の紋章、菊花紋章、わいせつ物を表した意匠
②他人の業務にかかる物品と混同を生ずるおそれのある意匠
例:他者が業務で使用する標章などを表する意匠
③物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
例:コンセントの差込口の形状
存続期間は登録日から20年間(21条)
第3 実用新案権・意匠権の効果
・差止請求可能
・損害賠償請求可能
・刑事罰あり
・信用回復措置請求可能
・訴額については特許権と同様
以上