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事業承継をめぐる諸問題 -株式の集中- (弁護士 齋藤 伸一)
前回の丸山先生の発表では,自社株の承継方法について言及があったものと思われるが,今回は,承継にあたり株式を後継者に集中させる際の諸問題を検討する。
1 株式集中が問題となるケース
(1)先代の段階で株式が分散している場合
(2)先代の段階では株式が集中していたが相続の際に分散した場合
(3)先代は,生前承継させるつもりだが,承継後も影響力を残したい場合
(4)名義株が存在している場合
名義株:株主名簿に記載されている株主と真の株主が相違している株式
2 分散時の対応策
(1)後継者が株式を買い取る
(生前贈与,遺言,死因贈与,遺言及び遺産分割については前回)
(2)会社が新株を発行して後継者だけに割当て(第三者割当て)
(3)会社が自社株を取得して後継者の持ち株比率を上げる
ア 合意による買取り(156,160)
イ 会社に株式取得権を付与
① 既存株式に取得条項付種類株式の利用(107Ⅰ③,108Ⅰ⑥)
・先代が贈与や遺言などで,
普通株式→後継者
・取得条項付株式→非後継者 としておく
→取得条項に基づき会社が取得
② 相続人等に対する売渡請求制度の導入(174)
(要件)
(注意点)
(4)スクイーズ・アウト
ア 特別支配株主の株式等売渡請求(179~)
イ 株式併合の利用(180~182)
ウ 全部取得条項付種類株式の応用(171Ⅰ,108Ⅰ⑦)
流れの一例
→全部取得条項付種類株式を導入
→発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更
→全部取得条項付種類株式の取得及び対価として端株を交付する
特別決議
3 議決権の分散防止
(1)議決権制限種類株式(108Ⅰ③)
(2)拒否権付種類株式(108Ⅰ⑧)
(3)株主ごとの異なる取り扱い(109Ⅱ)
4 生前は先代が影響力を残す対策
(1)拒否権付種類株式(108Ⅰ⑧)
・注意点
・対応策
(2) 役員選解任権付種類株式(108Ⅰ⑨)
5 名義株の対応
(1)名義の変更
(2)証拠の確保
(3)税法上の問題
6 その他種類株式による対応等
(1)剰余金の配当優先種類株式(108Ⅰ①)
(2)残余財産分配に関する優先株式(108Ⅰ②)
(3)取得請求権付種類株式(108Ⅰ⑤)
(4)従業員持株会の設立(議決権制限付種類株式)
・民法上の組合(民法第667条)
・配当還元価額(原則的評価額に比べて評価額が低い)で譲渡
→株価が下がる
・規約に,退職時には従業員持株会が株式を強制的買戻し規定
以上