埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2018年度 >2018年7月20日発表
第1 事業再生とは何か
1 倒産する会社の問題点
①利益が出せない,②負債が大きすぎる。
→以上の2つが大きな原因となって,お金が支払えないために会社は「倒産」する。
2 倒産を防ぐための2大ポイント
① 利益を出せるようにする。
② 負債を適正な額に調整する。
⑴ 重要なのは①。
なぜならば,負債が多くて倒産するという会社は少ないが,利益が出ない会社は確実に倒産するから。
⑵ ②の方法としては,リスケジュールと債務の一部免除の方法がある。後者については,詳述する。
3 事業を再建できるかどうかのポイント
① 経営者自身に再建の意欲があるかどうか。
② 事業自体に利益を上げられる見込みがあるかどうか。
③ 周囲の理解と協力を得られるかどうか
第2 事業再生のためになすべきこと
1 債務者企業
⑴ 本業を立て直して利益を上げる。
⑵ 金融機関と積極的にコミュニケーションをとる。
→計画をどこまで達成すればどこまで評価されるのか,率直に聞く。
2 サポート役の士業
⑴ 可能な限り自主再建を目指す。
⑵ 安易に破産は勧めない。
→少なくとも経営者がもう破産すると腹を決めない限り,勧めることはしない方がいい。
最後に社長が自分で判断して決断する。
⑶ 月次のキャッシュ・フローを把握する。
⑷ 金融機関の特性を理解する。
ア 原則として債務免除をしないこと
イ 売掛金の差押えのような強硬なことはしないこと
ウ 預金を絶対に解放しないこと
エ こちらが提出する資料は稟議を通りやすいように作成すること
オ 金利だけは何とか支払っていれば何とか生かしていこうという方針を採ること
第3 経営の改善~①利益を出せるようにする~
1 月次資金繰り表(キャッシュフロー表)を作成して,数値を把握・分析する。
2 事業計画を作って具体策を実行していく。
3 資金をためる。
4 支払の優先順位を考える。
第4 負債の調整~②負債を適正な額に調整する~
1 リスケジュール
⑴ 金利だけは何とか頑張って払う。
⑵ 経営改善計画をきちんと出して実行・達成する。
⑶ 達成できなかった場合には,金融機関を訪問して努力している姿勢をきちんと示す。
2 私的整理
⑴ 総論
私的整理を原則とすべき。
法的整理は,取引先を巻き込んでその信用を失う。
⑵ 各論
ア 債権譲渡方式(DPO,ディスカウントペイオフ)
価値のない無担保で回収可能性がない債権を集めて,これに不動産の担保がある割と優良な債権をくっつけて,まとめて束にしてサービサーに売却する。
複数のサービサーに入札してもらって,一番高い値段を付けたところに売る。
→どのサービサーが付くか分からないから,あまりお勧めできない。
イ 特定調停
日弁連中小企業センターは,中小企業再生支援協議会と並ぶ裁判所版私的整理として,活用を広めていきたいと考えている。
※内容については,添付した資料を参照。
ウ 事業再生ADR
実際にはかなり費用が掛かる(数千万円?)ので,一般の中小企業には利用が難しい。
エ 中小企業再生支援協議会
中小企業の私的整理に広く利用されている。中立公正な第三者が関与するため,公正・透明性が確保され,計画の合理性も検証されている。
※内容については,添付した資料を参照。
オ 私的整理ガイドライン
メインバンクの主導により行われる。
現在は,事業再生ADRや中小企業再生支援協議会に代わられており,ほとんど使われていない。
カ 第二会社方式
債務者とは別人格の新会社(第二会社)に事業を承継し,旧会社(債務者)自身は清算する。
負債の処理は,①第二会社から債務者に譲渡代金が支払われ,代金が負債の一部の返済に充てられ,残余の債務は免除されるという方法と,②第二会社が負債の一部を細霧引受するという方法,③旧会社は清算するという方法がある。
キ その他
3 法的整理
民事再生は最終手段。
→民事再生だと,これまで掛けで支払いができた仕入れ先に対して掛け払いができなくなり,全て現金取引になる。