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公的医療保険の全体像(司法書士 西野秀明)
Ⅰ.日本の公的医療保険制度の理念と枠組み
1.国民皆保険
1961年スタート
・誰でも
・いつでも
・どこでも
(cf: 海外の制度と近年の動向)
2.制度の分立
(ア)健康保険(1922年~)
(イ)船員保険 被用者保険
(ウ)共済組合
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(エ)国民健康保険(1961年~) ← 最も条件が悪いため、国費を投入
Ⅱ.健康保険と国民健康保険
1.健康保険
(1)保険者:
①健康保険組合
・いわゆる「組合健保」
・大企業が一つの保険集団を形成。全国で約1,500。
②全国健康保険協会
・いわゆる「協会けんぽ」(かつては社保庁の「政管健保」)
・組合健保がない事業所全てをカバー
(2)被保険者:
●事業所単位で判断
・一定の業種で、5名以上雇用している事業所
・法人は、1名以上雇用していれば対象。業種も問わない。
●扶養家族も自動的に対象(75歳以上の高齢者を除く)
(3)保険料:
●標準報酬月額が基準
●労使折半
●既往歴などは無関係(cf. 民間の医療保険)
●扶養家族は納付不要(130万円の壁、106万円の壁)
(4)保険給付:
●療養の給付(健康保険法第63条)=医療サービスの現物給付のこと
※かかった費用の一定割合を負担
・原則3割
・未就学児2割
・後期高齢者1割
●療養費・手当金の給付制度もあり
<一例>
・傷病手当金(健康保険法第99条)【添付資料①~③参照】
・埋葬料(健康保険法第100条)
・高額療養費(健康保険法第115条)
2.国民健康保険
(1)保険者:
①市町村
②国民健康保険組合(弁護士、医師など)
(2)被保険者:
●被用者保険の加入者以外の全て
農業者とその他自営業のための国保
↓ 時代とともに・・・
高齢者(年金暮らし世帯)のための国保 (下記Ⅲの議論へ)
(3)保険料:
●市町村により条例で異なる
<主なもの>
・所得割(所得に応じて賦課)
・資産割(資産に応じて賦課)
・均等割(個人単位で賦課)
・平等割(世帯単位で賦課)
★所得割と均等割が入っていれば、あとは条例で組み合わせ自由
★上限65万円/年
(4)保険給付:
健康保険とほぼ同じ
Ⅲ.高齢者医療制度
1.高齢者医療を特別に論じなければならない理由
①高齢者の医療費が他国と比べ高い(入院治療≒介護療養)
②高齢者の国民健康保険への偏在
介護制度の整備とともに、高齢者医療制度の改革へ
2.制度改革の流れ
①老人保健制度(1983年2月~)
・高齢者の一部自己負担の復活
・被用者保険と国民健康保険とで高齢者医療費を平等に分担、など
バブル崩壊と景気低迷・少子高齢化の加速
②後期高齢者医療制度(2008年4月~)へ
3.後期高齢者医療制度の概要
(1)保険者:
●後期高齢者医療広域連合
(都道府県単位で全市町村が加入する特別地方公共団体)
(2)被保険者:
●75歳以上の高齢者(65歳以上の寝たきりなど障害者を含む)
<例外>生活保護受給者
(3)保険料:
●公費負担5割
●健保・国保からの支援金4割
●本人負担1割
(4)保険給付:
●健保・国保とほぼ同じ
(高齢者特有の診療報酬項目の導入は、政権交代により廃案)
各制度の比較
健康保険 国民健康保険 後期高齢者医療制度
保険者 ①健康保険組合(組合健保)
②全国健康保険協会(協会けんぽ) ①市町村
②国民健康保険組合
(弁護士、医師など) 後期高齢者医療広域連合
被保険者 ●5名以上の事業所(法人は1名以上)の被用者
●扶養家族も対象(75歳以上を除く)
●被用者保険の加入者以外の全て ●75歳以上の高齢者
●65歳以上の寝たきりなど障害者
保険料 ●標準報酬月額が基準
●労使折半
●既往歴などは無関係
●扶養家族は納付不要 ●市町村により条例で異なる
★所得割と均等割は必ず含む
★上限65万円/年 ●公費負担5割
●健保・国保からの支援金4割
●本人負担1割
保険給付 ●療養の給付=医療サービスの現物給付
●療養費・手当金の給付制度もあり