埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2019年度 >2019年6月14日発表
子どもの公的保障(弁護士 伊奈達也)
第1 出産育児一時金
1 概要
出産育児一時金とは,子どもを出産することで42万円もらえる手当金のこと。
妊娠や出産は病気で病院にかかる場合と違って健康保険が使えないため、かかる費用が全額自己負担になってしまう。そのため出産費用負担を軽減するための制度である。
2 さいたま市の場合
⑴ 内容
さいたま市の国民健康保険加入者が出産したとき、出産育児一時金が支給される。妊娠12週以上であれば死産・流産でも支給されるが,この場合医師の証明が必要となる。
◆出産児1人ごとの支給額
出産日 分娩機関が産科医療補償制度に
加入していて、妊娠22週以上の場合 左記以外の場合
平成27年1月1日以降 42万円 40万4000円
平成26年12月31日まで 42万円 39万円
⑵ 注意
ア 国民健康保険以外の他の健康保険に1年以上加入しており、資格を喪失してから、半年以内の出産については、加入していた他の健康保険から支給される場合がある。加入していた健康保険から支給を受ける場合は、さいたま市の国民健康保険からは支給されない。
イ 申請が出産日の翌日から2年を経過すると時効となり支給されない。
⑶ 直絶支払制度
ア 概要
手元に現金がなくとも安心して出産できるようにするため、出産費用に出産育児一時金を充てることができるように直接医療機関に支払う制度のこと。
イ 手続
出産のために入院した医療機関等で「直接支払に合意する文書」に署名する。
産科医療補償制度に加入している分娩期間かどうかにより,支給額や支払先,別途区役所への申請が必要になるかどうかが変わるので,注意が必要。
第2 出産手当金:
給料が約98日間受け取れる。
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給される。
詳しくは,協会けんぽのホームページを参照。
(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148)
第3 出産祝い金
1 概要
子どもが生まれると,自治体によっては出産祝い金を受け取ることができる。例えば現金、商品券、出産祝いの品物など。
自治体によって違うので,各自治体に問い合わせをしておくべき。ちなみに,さいたま市では残念ながらそのような制度はないようである。
2 渋谷区の場合
例えば,東京都渋谷区では,以下のとおり,出産時の経済的負担の軽減を図り、安心して出産ができるよう、出産した人にハッピーマザー出産助成金が支給される。
⑴ 助成対象
妊娠12週を超えて(85日以上)出産し、出産日の3か月前から申請日現在まで継続して区内に住民登録があり、健康保険に加入している人
⑵ 助成内容
1人の出産につき限度額10万円
ただし、加入している健康保険から付加給付が支給される場合は、その額を控除した金額となる。
第4 児童手当
1 概要
家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会をになう児童の健やかな成長に資することを目的とし、児童を養育している方に手当を支給する制度のこと。子ども1人あたり最大1万5000円受け取ることができる。
2 さいたま市の場合
⑴ 申請できるのは,さいたま市に住民登録があり、中学校修了前(15歳になった後の最初の3月31日)までの児童を養育している方で、次の支給要件を満たしている者。
① 児童が国内に居住していること(留学の場合は除く)
② 児童が児童養護施設に入所,里親に委託されていないこと
→児童養護施設等に入所している場合は施設設置者が受給者となる。
⑵ 父も母も児童を養育している場合には、生計を維持する程度の高い方(一般的には所得の高い方)が申請者となる。
公務員の方は勤務先への申請となる。ただし、独立行政法人や国立大学法人など子ども・子育て拠出金の納付義務がある法人については市区町村への申請となる。
受給対象者が複数いる場合,児童と同居している者に支給する(単身赴任を除く。)
未成年後見人や父母指定者(父母が国外にいる場合のみ)に対しても、父母と同じ要件を満たせば支給される。
⑶ 給付される金額
◆児童手当の支給額(月額)
年齢 金額
3歳未満(一律) 1万5000円
3歳以上から小学校修了前(第1子・第2子) 1万0000円
3歳以上から小学校修了前(第3子以降) 1万5000円
中学生(一律) 1万0000円
児童手当については、前年の所得が一定の額以上である場合には支給されない。もっとも,児童手当が支給されない方に対し、当面の間、特例給付として、中学校修了前までの児童1人あたり月額5000円が支給される。
第5 児童扶養手当
1 概要
父母の離婚などで、父又は母と生計を同じくしていない子どもが育成される家庭(ひとり親家庭)の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図ることを目的として支給される手当のこと。子ども1人当たり最大4万円程度受け取ることができる。
2 さいたま市の場合
⑴ 支給を受けることができるのは,18歳に達した日の属する年度の3月末日までの児童、又は20歳未満の一定以上の障害がある児童で、次のいずれかの条件に該当する児童を養育している母又は父もしくは養育者。
① 父母が離婚した児童
② 父又は母が死亡した児童
③ 父又は母が一定以上の障害の状態にある児童
④ 父又は母が1年以上遺棄している児童
⑤ 父又は母が裁判所からの保護命令を受けた児童
⑥ 父又は母が1年以上拘禁されている児童
⑦ 母が未婚で懐胎した児童
⑧ その他の理由で父又は母がいない児童
⑵ 父、母、養育者又は児童が公的年金等を受給し、その額が児童扶養手当額より低い場合、差額分の手当を受給することができる。公的年金等とは、遺族年金、障害年金、老齢年金、労災年金、遺族補償など。
⑶ 手当の額
所得額及び児童数により手当額は異なる(平成31年4月1日現在)
◆手当額(平成31年4月分~)
区分 全額支給 一部支給(所得に応じて決定)
児童1人のとき 月額4万2910円 月額4万2900円から1万0120円
児童2人目の加算額 月額1万0140円 月額1万0130円から5070円
児童3人目以降の加算額 月額 6080円 月額6070円から3040円
公的年金等受給者は、公的年金等受給額が児童扶養手当額より低い場合に限り、その差額分の児童扶養手当を受給することができる。
手当額は固定ではなく,物価変動等の要因により改正される場合がある。
第6 育児休業給付金
1 概要
育児休業給付には、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」がある。
育児休業給付は、被保険者が1歳又は1歳2か月(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6か月又は2歳)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことがある方については、その後のものに限ります。)が12か月以上あれば、受給資格の確認を受けることができます。
2 要件
① 育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
② 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であること(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)。
3 支給額
育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額
第7 育児休業中の社会保険料免除
1 概要
育児・介護休業法による,満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも徴収されなくなる制度のこと。
この申出は、被保険者が次に掲げる育児休業等を取得する度に、事業主が手続する必要がある。
また、この申出は、現に申出に係る休業をしている間に行わなければならない。
① 1歳に満たない子を養育するための育児休業
② 1歳から1歳6か月に達するまでの子を養育するための育児休業
③ 1歳6か月から2歳に達するまでの子を養育するための育児休業
④ 1歳(上記(②)の場合は1歳6ヶ月、上記(③)の場合は2歳)か
ら3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置
による休業
2 免除期間
保険料の徴収が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)まで。
第8 子育て支援パスポート
さいたま市の場合は,「パパ・ママ応援ショップ優待カード」という名前になっている。
子育て家庭に配布している「優待カード」を協賛店舗等で提示すると、お店が定めた特典(サービス)を受けることができる(協賛店舗には、協賛ステッカーが貼られている。)。
紙の優待カードのほか、スマートフォンアプリでも利用できる。
対象とされるのは,以下の2つ。
① 妊娠中の方がいる世帯
② 18歳に達して最初の3月31日を迎えるまでの子がいる世帯
第9 子ども医療費助成制度
1 概要
子どもたちを安心して生み育てることのできる環境づくりを推進するため、少子化対策と子育て支援の観点から、0歳から中学校卒業前までのお子様の医療費の一部負担金を助成する制度。
2 さいたま市の場合
⑴ 助成対象者は,さいたま市在住の0歳から中学校卒業前までの子
なお,15歳になってから最初の3月末日を過ぎてもなお、特別の事情により中学校に在学中の方は助成対象となる。ただし,手続が必要となる。
⑵ 助成範囲は,以下のとおり。
ア 健康保険各法の規定による一部負担金(保険診療分)の全額
ただし,保険のきかない医療費や医療材料は助成されない。
Ex.文書料、薬の容器代、予防接種代、健康診断料、差額ベッド 料、保険診療外の歯科治療費、入院時の食事療養標準負担額、保険外併用療養費の初診料)
また,高額療養費やスポーツ振興センター災害共済給付等、法令に定める他の制度から医療費が支給されるときは、その額については子育て支援医療費助成制度では助成されない。
イ 子育て支援医療費の助成を受けるには,登録申請して,子育て支援医療費受給資格証の交付を受ける必要がある。
出生日や転入日の翌日から1年以内に登録申請をする必要がある。
なお,1年を経過しても登録申請はできるが、助成の開始日が登録申請日からとなる。
以上