埼玉企業法務研究会トップページ > 活動報告 > 2019年度 >2019年10月31日発表
障害年金の基礎(弁護士 原田茂喜)
私は,若いころから,監視されています。家族に勧められて,精神科により処方されたこともありますが効果はありません。やはり,監視は続いています。仕事を通じて,監視されている可能性もあります。仕事は,アルバイト程度で,年金保険料を払ったことはありません。
親になんとか助けてもらって生活をしていますが,私は仕事もしておらず,お金がありません。
このような私にも年金がでると聞きましたが,もらえるのでしょうか?
1 定義・趣旨(国年法1)
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に,現役世代の方も含めて受け取ることができる年金をいう。
障害があるがゆえに稼働所得を得られない障害者の所得の保障を目的とする。
2 公的年金
⑴ 分類
公的年金とは,国が運営する年金をいう。
公的年金には、3種類あり、日本国内に住所のあるすべての人が加入を義務づけられている。その人の働き方により加入する年金制度が決まっています。
① 国民年金
② 厚生年金
③ 共済年金
⑵ 原因による分類
① 老齢年金
② 障害年金
③ 遺族年金
⑶ 強制加入保険者
① 第1号被保険者: 20歳以上60歳未満の日本国内に住所を有する人で,第2号被保険者,第3号被保険者以外の人
EX:自営業者 農業 漁業 学生 フリーター 無職 これらの配偶者
② 第2号被保険者: 厚生年金保険などの被用者年金制度の被保険者
EX:民間企業の会社員 国家公務員 地方公務員 私立学校の教職員
③ 第3号被保険者: 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
(楽天生命ホームページから引用)
3 障害年金のしくみ
⑴ 障害基礎年金
⑵ 障害厚生年金
⑶ 振り分け
初診日に国民年金に加入→障害基礎年金
初診日に厚生年金に加入→障害厚生年金
※ 20歳前傷病障害年金は,国民年金未加入なくとも,障害基礎年金
4 年金額(2019年4月から)
⑴ 障害年金
① 1級
78万100円×1.25+子の加算
② 2級
78万100円+子の加算
⑵ 障害厚生年金
① 1級
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕
② 2級
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕
③ 3級(2級のような基礎年金部分がない)
(報酬比例の年金額) 最低保障額 585,100円
※報酬比例の年金額とは,平均標準報酬額の0.00548に被保険者期間月数を乗じた額
④ 障害手当金
3級に至らない程度で,「傷病が治ったもの」に対し,3級の年金額の「2年分」が「一括支給」される。
(NPO法人障害年金支援ネットワークのホームページより引用)
5 受給三要件(国年法30条)
① 加入要件:初診日に公的年金に加入
② 納付要件:初診日の前日に一定期間保険料を納付したこと
③ 障害の程度要件:障害認定日において法の定める障害の程度にあること
○参 年金機構→障害年金
※ ただし,20歳前傷病障害年金(国年法30の4)は①も②も不要
⑴ 初診日
ア 初診日とは,障害の原因傷病につき始めて医師(又は歯科医師)を受診した日をいう(最高H20.10.10判決)。
イ 特定手順
① 本人からの聴取
② 加入・納付記録の確認
③ 初診日を別日とすることも検討
→納付要件を満たさないとき,厚生年金加入要件を満たさないときなど
※ 後発傷病で納付要件等満たすのであればそちらで請求をすればよい。ただし,精神障害の場合は異なる診断名でも同一傷病と評価されるので注意する。
ウ 初診日のカルテがない
① 請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができる。
② その他の資料
受診日,診療科,傷病名等のPCデータ
調剤記録,お薬手帳
過去にとった診断書
など,複数を利用する
③ 第三者証明(二名以上)
20歳前初診はこれだけでも認めれることがある。
20歳以降は,さらに,他の資料も必要。ただし,診療に関わった医療従事者の証明はそれのみでも認める。
⑵ 加入要件
初診日に国民年金または厚生年金の被保険者であること
⑶ 納付要件
原則: 初診日ある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の納付または免除(3分の2要件)
例外: 初診日ある月の前々月まで12か月に未納月がない(1年要件 運用上)
※ このどちらかの要件を満たせばよい。実務上は,まず,直近1年をチェックする。
⑷ 障害の程度要件
障害程度を認定する基準日に,障害等級に該当する程度の障害状態にあること
※ 事後重症請求は裁定請求日
(NPO法人サルベージ東京・埼玉ホームページより引用)
⑸ その他
障害基礎年金は,無拠出年金と拠出年金の2種類。
①無拠出年金: 20歳前に初診日がある人,
②拠出年金 : 20歳以降に初診日がある人
障害厚生年金は,全て拠出年金。
無拠出年金は,一定の所得があるときなどに支給停止があるので注意。
6 請求方法
⑴ 認定日請求と事後重症請求
① 認定日請求
障害認定程度の基準日が障害認定日の請求
② 事後重症請求(国年法30の2)
障害認定日に障害が法定の等級程度でなかったが,65歳の誕生日の前日までに障害状態が悪化して,法定の障害程度に達した場合の請求
⑵ 障害認定日
障害認定日とは,初診日から1年6月経過日又は症状固定日(症状が固定し治療効果が期待できない状態となった日)をいう。
※ 20歳前傷病障害年金の認定日は原則20歳到達日。ただし,初診日が18歳6ヶ月から20歳の場合は,20歳を過ぎ初診日から1年6か月が経過した日が初診日となる。
7 いつから支払われるのか
⑴ 認定日請求
認定日のある月の翌月から。最大過去5年分遡及して支払われる。
⑵ 事後重症請求
受給権発生日は年金請求日となる。つまり,遡及支払いはない。
→ 実務的には,以前から障害があったが法定の等級程度であることを証明できない場合にやむなく事後重症請求をすることが多い。
8 不服申立
審査請求
以上